海Ⅳ

　｢そろそろいこか｣



　友人に目配せしながら近づいていった。



　｢もう大丈夫やでぇ｣と浮き輪つかんだ瞬間w(ﾟoﾟ)w !。友人が





　｢あんまり、ワシがカッコええからって彼氏から乗り換えたりしたらあかんで｣



　ここまで来ると作戦なのか、たちが悪いのか判らない。





　女性は｢ありがとうございます｣と念仏のように言い続けている。



　｢彼氏くんは、僕のボ-ドにつかまって、彼女さんは自分の浮き輪をかぶって｣



　離岸流から逃れるには、岸に向かって泳ぐと流れに逆らっているため体力を消耗するだけ。



　岸と平行に泳ぐのが鉄則。



　そうすると離岸流の流れのエリアから逃れやすくなる。



　そうやって離岸流から逃れると、波がある時は波の力で勝手に岸にたどり着く場合が多い。



　念仏ちゃん(彼女さんのあだ名)は、岸にたどり着くまで｢ありがとうございます｣と繰り返し唱えてた。



　

　ようやく、浜辺に着くと警察やら野次馬やらの人だかりが出来ていた。



　パチパチパチパチ…。



　｢イヤイヤ～。照れるなぁ～｣と照れ笑いを浮かべながら、拍手の中を駐車場に戻った。





　浜辺では警察官と新聞記者らしき人物が、カップルに事情聴取している。



　｢俺らも、聞かれるんやろか？｣



　｢そらそやろ、こっちも命がけやし。｣



　｢新聞に載るんかな？｣



　｢めんどくさいなぁ｣とか言いながら、



　内心では、



　｢通りすがりの者でござんす。波の又三郎でもお覚え下さい。｣



　とでも言おうかと構えていた。







　結局来なかった(＾＾；)。





　桃ももらえなかった(ＴＴ)。





　ｆｉｎ